白癜风可以治愈吗 http://m.39.net/pf/bdfyy/
编辑

飞飞·朗读

日高徹郎

さすがにその商人は、その後やっては来ませんでしたが、自分には、どうしてだか、その商人に対する憎悪よりも、最初に見つけたすぐその時に大きい咳ばらいも何もせず、そのまま自分に知らせにまた屋上に引返して来た堀木に対する憎しみと怒りが、眠られぬ夜などにむらむら起って呻きました。

打那以后,那个商人就再也没来过。不知为什么,比起那个商人,我倒是更恨掘木。是他第一个目睹了那幅场景,可他却什么都没有做——比如故意干咳一声等等——就直接折回到屋顶上诡秘地通知了我。对掘木的憎恶和愤怒会在不眠之夜油然而生,使我叹息呻吟。

ゆるすも、ゆるさぬもありません。ヨシ子は信頼の天才なのです。ひとを疑う事を知らなかったのです。しかし、それゆえの悲惨。

神に問う。信頼は罪なりや。

不存在什么原谅与不原谅的问题。良子是一个信赖的天才。她不知道怀疑他人。也正因为如此,才愈加悲惨。

我不禁问神灵:难道信赖他人也算是罪过吗?

ヨシ子が汚されたという事よりも、ヨシ子の信頼が汚されたという事が、自分にとってそののち永く、生きておられないほどの苦悩の種になりました。自分のような、いやらしくおどおどして、ひとの顔色ばかり伺い、人を信じる能力が、ひび割れてしまっているものにとって、ヨシ子の無垢の信頼心は、それこそ青葉の滝のようにすがすがしく思われていたのです。それが一夜で、黄色い汚水に変ってしまいました。見よ、ヨシ子は、その夜から自分の一顰一笑にさえ気を遣うようになりました。

在我看来,比起良子的身体遭到玷污,倒是良子对他人的信赖遭到玷污这件事,在以后漫长的岁月中埋下了我无法生活下去的苦恼的种子。我是一个畏畏缩缩、光看别人脸色行事、对他人的信赖之心已经裂纹丛生的人。对于这样的我来说,良子那种纯真无瑕的信赖之心就恰如绿叶掩映的瀑布一般赏心悦目。谁知它却在一夜之间蜕变为发黄的污水。这不,从那夜起,良子甚至对我的一颦一笑都开始大加注意了。

「おい」

と呼ぶと、ぴくっとして、もう眼のやり場に困っている様子です。どんなに自分が笑わせようとして、お道化を言っても、おろおろし、びくびくし、やたらに自分に敬語を遣うようになりました。

果して、無垢の信頼心は、罪の原泉なりや。

“喂,”我的一声叫喊便会让她胆战心惊。她似乎不知道该把视线投向哪里。无论我多么想逗她发笑而大肆进行滑稽表演,她都一直战战兢兢、畏首畏尾的,甚至在和我说话时滥用敬语。

难道纯真无瑕的信赖之心真的是罪恶之源吗?

自分は、人妻の犯された物語の本を、いろいろ捜して読んでみました。けれども、ヨシ子ほど悲惨な犯され方をしている女は、ひとりも無いと思いました。どだい、これは、てんで物語にも何もなりません。あの小男の商人と、ヨシ子とのあいだに、少しでも恋に似た感情でもあったなら、自分の気持もかえってたすかるかも知れませんが、ただ、夏の一夜、ヨシ子が信頼して、そうして、それっきり、しかもそのために自分の眉間は、まっこうから割られ声が嗄れて若白髪がはじまり、ヨシ子は一生おろおろしなければならなくなったのです。たいていの物語は、その妻の「行為」を夫が許すかどうか、そこに重点を置いていたようでしたが、それは自分にとっては、そんなに苦しい大問題では無いように思われました。許す、許さぬ、そのような権利を留保している夫こそ幸いなる哉、とても許す事が出来ぬと思ったなら、何もそんなに大騒ぎせずとも、さっさと妻を離縁して、新しい妻を迎えたらどうだろう、それが出来なかったら、所謂「許して」我慢するさ、いずれにしても夫の気持一つで四方八方がまるく収るだろうに、という気さえするのでした。つまり、そのような事件は、たしかに夫にとって大いなるショックであっても、しかし、それは「ショック」であって、いつまでも尽きること無く打ち返し打ち寄せる波と違い、権利のある夫の怒りでもってどうにでも処理できるトラブルのように自分には思われたのでした。けれども、自分たちの場合、夫に何の権利も無く、考えると何もかも自分がわるいような気がして来て、怒るどころか、おこごと一つも言えず、また、その妻は、その所有している稀な美質に依って犯されたのです。しかも、その美質は、夫のかねてあこがれの、無垢の信頼心というたまらなく可憐なものなのでした。

無垢の信頼心は、罪なりや。

我四处搜罗那些描写妻子被人奸污的故事书来看,但我认为,没有一个女人遭到良子那样悲惨的奸污。她的遭遇是不能成其为故事的。在那个小个子商人与良子之间,倘若存在着哪怕是一丁点儿近似于恋爱的情感,那么,或许我的心境反而会获得拯救。然而,就是在夏天的那个夜晚,良子相信了那个家伙。事情不过如此而已,却害得我被人迎面砍伤了额头,声音变得嘎哑,头发出现少年白,而良子也不得不一辈子提心吊胆了。大部分故事都把重点放在丈夫是否原谅妻子那种“行为”之上,但这一点对我来说,却并不是那么令人苦恼的重大问题。原谅与不原谅,拥有这种权利的丈夫无疑是幸运的,倘若认为自己无法原谅妻子,那么也毋用大声喧哗,只要立即与她分道扬镳,然后再娶一个新娘子不就一了百了了吗?如果做不到这一点,那就只好“原谅”对方,自我忍耐罢了。不管怎么说,单凭丈夫自己的心情就能够平息八方事态的吧。总之,在我看来,即使是那种事件是对丈夫的一个巨大打击,但也仅限于“打击”而已。与那种永不休止地冲击海岸的波涛不同,它是一种可以借助拥有权利的丈夫的愤怒来加以处置和化解的纠葛。而我的情形又是如何呢?作为丈夫不具备任何权利,不用说发怒,甚至连一句怨言也不能吐露。而妻子恰恰是被她自己的那种罕见的美好品质残酷地奸污了。并且,那种美好的品质正好是丈夫久已向往的、被称之为“纯真无瑕的信赖之心”的这样一种可怜之物。

难道纯真无瑕的信赖之心也算是罪过吗?

唯一のたのみの美質にさえ、疑惑を抱き、自分は、もはや何もかも、わけがわからなくなり、おもむくところは、ただアルコールだけになりました。自分の顔の表情は極度にいやしくなり、朝から焼酎を飲み、歯がぼろぼろに欠けて、漫画もほとんど猥画(わいが)に近いものを画くようになりました。

いいえ、はっきり言います。

自分はその頃から、春画のコピイをして密売しました。焼酎を買うお金がほしかったのです。いつも自分から視線をはずしておろおろしているヨシ子を見ると、こいつは全く警戒を知らぬ女だったから、あの商人といちどだけでは無かったのではなかろうか、また、堀木は?いや、或いは自分の知らない人とも?と疑惑は疑惑を生み、さりとて思い切ってそれを問い正す勇気も無く、れいの不安と恐怖にのたうち廻る思いで、ただ焼酎を飲んで酔っては、わずかに卑屈な誘導訊問(じんもん)みたいなものをおっかなびっくり試み、内心おろかしく一喜一憂し、うわべは、やたらにお道化て、そうして、それから、ヨシ子にいまわしい地獄の愛撫(あいぶ)を加え、泥のように眠りこけるのでした。

その年の暮、自分は夜おそく泥酔して帰宅し、砂糖水を飲みたく、ヨシ子は眠っているようでしたから、自分でお勝手に行き砂糖壺を捜し出し、ふたを開けてみたら砂糖は何もはいってなくて、黒く細長い紙の小箱がはいっていました。何気なく手に取り、その箱にはられてあるレッテルを見て愕然(がくぜん)としました。そのレッテルは、爪で半分以上も掻(か)きはがされていましたが、洋字の部分が残っていて、それにはっきり書かれていました。

DIAL。

我甚至对这种唯一值得依傍的美好品质也产生了疑惑,一切的一切都变得越发不可理喻,以致于我的前方只剩下了酒精。我脸上的表情变得极度的卑微,一大早就喝开了烧酒,而牙齿也落得残缺不全了,手头的漫画也只是一些近似于淫画的东西了。

不,还是让我坦白地说吧。

那时候我开始复制春画进行秘密贩卖,因为我急需喝酒的钱。每当我看到良子把视线从我身上挪开,一副惴惴不安的模样时,我甚至会胡思乱想到:她是一个完全不知道防备别人的女人,没准和那个商人之间并非只有一次吧?——疑心生疑心,结果形成了一个恶性循环的怪圈。可我却没有勇气去加以证实,以致于被那惯有的不安和恐惧纠缠着,只能在喝得醉醺醺之后,才敢小心翼翼地试着进行卑屈的诱导性审讯。尽管内心深处是忽而高兴忽而沮丧,可表面上我却拼命地进行滑稽表演,在对良子施加地狱般可憎的爱抚之后,如同一滩烂泥似的酣然大睡。

那一年的年末,到了夜深人静之时我才酩酊大醉地回到家里。当时我很想喝一杯白糖开水,可良子像是已经睡着了,所以我只好自个儿去厨房找出白糖罐。打开盖子一看,里面却没有白糖,只有一个细长的黑色纸盒。我漫不经心地拿在手里一看,只见盒子上贴着一张标签,使我目瞪口呆。尽管那标签被人用指甲抠去了一大半,但标有洋文的部分却留了下来,上面一目了然地写着:DIAL。

ジアール。自分はその頃もっぱら焼酎で、催眠剤を用いてはいませんでしたが、しかし、不眠は自分の持病のようなものでしたから、たいていの催眠剤にはお馴染(なじ)みでした。ジアールのこの箱一つは、たしかに致死量以上の筈でした。まだ箱の封を切ってはいませんでしたが、しかし、いつかは、やる気でこんなところに、しかもレッテルを掻きはがしたりなどして隠していたのに違いありません。可哀想に、あの子にはレッテルの洋字が読めないので、爪で半分掻きはがして、これで大丈夫と思っていたのでしょう。(お前に罪は無い)

自分は、音を立てないようにそっとコップに水を満たし、それから、ゆっくり箱の封を切って、全部、一気に口の中にほうり、コップの水を落ちついて飲みほし、電燈を消してそのまま寝ました。

三昼夜、自分は死んだようになっていたそうです。医者は過失と見なして、警察にとどけるのを猶予してくれたそうです。覚醒(かくせい)しかけて、一ばんさきに呟いたうわごとは、うちへ帰る、という言葉だったそうです。うちとは、どこの事を差して言ったのか、当の自分にも、よくわかりませんが、とにかく、そう言って、ひどく泣いたそうです。

次第に霧がはれて、見ると、枕元にヒラメが、ひどく不機嫌な顔をして坐っていました。

「このまえも、年の暮の事でしてね、お互いもう、目が廻るくらいいそがしいのに、いつも、年の暮をねらって、こんな事をやられたひには、こっちの命がたまらない」

ヒラメの話の聞き手になっているのは、京橋のバアのマダムでした。

巴比妥酸。那时我全是喝烧酒,并没有服用安眠药。不过,不眠症似乎成了我的宿疴,所以对大部分安眠药都相当了解。单凭这一盒巴比妥酸就足以致人于死地。盒子尚未开封,想必她曾经涌起过轻生的念头,才会撕掉上面的标签把药盒子隐藏在这种地方吧。也真够可怜的,这孩子因为读不懂标签上的洋文,所以只用指甲抠掉其中的一半,以为这样一来就无人知晓了。(你是无辜的。)

我没有发出声响,只是悄悄地倒满一杯水,然后慢慢地给盒子开了封,一口气把药全部塞进了嘴巴里,冷静地喝干杯中的水,随即关掉电灯就那么躺下睡了。

据说整整三个昼夜,我就像死掉了一般。医生认为是过失所致,所以一直犹豫着没有报警。据说我苏醒过来第一句话就是“回家”。所谓的“家”,究竟指的哪儿,就连我自己也不得而知。总之,听说我是那么说了,并且号啕大哭了一场。

渐渐地眼前的雾散开了,我定睛一看,原来是“比目鱼”一副老大不高兴的样子坐在我的枕边。

“上一次也是发生在年末的时候。这种时候谁不是忙得个团团转呐。可他偏偏爱挑准年末来干这种事,这不是要我的命吗?”

在一旁听比目鱼发牢骚的,是京桥那家酒吧的老板娘。

「マダム」

と自分は呼びました。

「うん、何? 気がついた?」

マダムは笑い顔を自分の顔の上にかぶせるようにして言いました。

“夫人。”我叫道。

“嗯,有什么事?你醒过来了?”

老板娘一边说着,一边把她的那张笑脸贴在了我的脸上。

自分は、ぽろぽろ涙を流し、

「ヨシ子とわかれさせて」

自分でも思いがけなかった言葉が出ました。

我不由得泪如泉涌。

“就让我和良子分手吧。”

脱口而出的竟是这样一句连我自己也意想不到的话。

マダムは身を起し、幽かな溜息をもらしました。

それから自分は、これもまた実に思いがけない滑稽とも阿呆らしいとも、形容に苦しむほどの失言をしました。

「僕は、女のいないところに行くんだ」

うわっはっは、とまず、ヒラメが大声を挙げて笑い、マダムもクスクス笑い出し、自分も涙を流しながら赤面の態になり、苦笑しました。

老板娘欠起身,流露出轻微的叹息。

接下来我又失言了,而且这一次的失言是那么唐突,简直无法断言到底是滑稽还是愚蠢。

“我要到没有女人的地方去。”

“哈——哈——哈—”首先是“比目鱼”大声地笑了,然后老板娘也哧哧地笑出了声。最后连我自己也一边流着眼泪,一边红着脸苦笑了起来。

「うん、そのほうがいい」

とヒラメは、いつまでもだらし無く笑いながら、

「女のいないところに行ったほうがよい。女がいると、どうもいけない。女のいないところとは、いい思いつきです」

女のいないところ。しかし、この自分の阿呆くさいうわごとは、のちに到って、非常に陰惨に実現せられました。

“唔,那样倒是好呀。”“比目鱼”一直在粗俗地笑着,他说道,“最好是到没有女人的地方去。要是有女人的话,怎么着都不行,去没有女人的地方,这倒是个好主意呐。”

没有女人的地方。但我这近于痴人说梦般的胡言乱语,不久居然悲惨地化作了现实。

ヨシ子は、何か、自分がヨシ子の身代りになって毒を飲んだとでも思い込んでいるらしく、以前よりも尚いっそう、自分に対して、おろおろして、自分が何を言っても笑わず、そうしてろくに口もきけないような有様なので、自分もアパートの部屋の中にいるのが、うっとうしく、つい外へ出て、相変らず安い酒をあおる事になるのでした。

良子似乎一直认为,我是作为她的替代而吞下毒品的,因此在我面前比过去更加胆战心惊了。无论我说什么,她都不苟言笑,所以,呆在公寓的房间里我会感到胸闷气短,忍不住又跑到外面酗酒去了。

しかし、あのジアールの一件以来、自分のからだがめっきり痩せ細って、手足がだるく、漫画の仕事も怠けがちになり、ヒラメがあの時、見舞いとして置いて行ったお金(ヒラメはそれを、渋田の志です、と言っていかにもご自身から出たお金のようにして差出しましたが、これも故郷の兄たちからのお金のようでした。

但自从巴比妥酸事件以后,我的身体明显消瘦了,手脚也变得软弱兀立,画漫画稿时也常常偷懒怠工。那时,作为探望费,“比目鱼”留给我一笔钱(“比目鱼”说“这是我的一点心意”,随即递给我那笔钱,就好像是从他自己的荷包里掏出来的一样。可事实上这也是老家的哥哥们寄来的钱。

自分もその頃には、ヒラメの家から逃げ出したあの時とちがって、ヒラメのそんなもったい振った芝居を、おぼろげながら見抜く事が出来るようになっていましたので、こちらもずるく、全く気づかぬ振りをして、神妙にそのお金のお礼をヒラメに向って申し上げたのでしたが、しかし、ヒラメたちが、なぜ、そんなややこしいカラクリをやらかすのか、わかるような、わからないような、どうしても自分には、へんな気がしてなりませんでした)

这时,我已经不同于当初逃离“比目鱼”家时的我了,能够隐隐约约地看穿“比目鱼”那种装腔作势的把戏了,所以我也就能狡猾地装出不知内情的样子,向“比目鱼”道了谢。但是,“比目鱼”等人干吗要弃简从繁,不直截了当地说出真相呢?其中的缘由我似懂非懂,觉得十分蹊跷)。

そのお金で、思い切ってひとりで南伊豆の温泉に行ってみたりなどしましたが、とてもそんな悠長な温泉めぐりなど出来る柄ではなく、ヨシ子を思えば侘びしさ限りなく、宿の部屋から山を眺めるなどの落ちついた心境には甚だ遠く、ドテラにも着換えず、お湯にもはいらず、外へ飛び出しては薄汚い茶店みたいなところに飛び込んで、焼酎を、それこそ浴びるほど飲んで、からだ具合いを一そう悪くして帰京しただけの事でした。

我打定主意用那笔钱独自道南伊豆温泉去看看。不过,我不属于那种能够长时间地绕着温泉悠闲旅行的人,一想到良子,我就感到无限的悲凉。而我自己与那种透过旅馆房间的窗户眺望山峦的平和心境更是相距甚远,在那里我既没有换穿棉和服,也没有泡温泉澡,只是跑进外面一家并不干净的茶馆似的地方,拼命地喝酒,把身体糟蹋得更加羸弱之后才回到了东京。

预览时标签不可点收录于话题#个上一篇下一篇


转载请注明地址:http://www.qingyedana.com/qydgx/5612.html